メモリザ誕生物語
試作開始から30年。
時をさかのぼること1960年代、重ね煮という調理法を生み出した故小川法慶師が友人の急病に際して、とっさのヒラメキで手元にあった鉄なべで玄米を真っ黒に煎り上げそれを炊き出して飲ませたところ、友人は一命を取りとめました。
この偶然と必然によって生まれた飲み物は、その後、玄米に神の力が宿ったということから、 先生自ら「玄神」と名づけ、黒煎り玄米は、その効用ゆえに、いつのまにか人から人へと伝えられ広まってゆきました。
岡山で自然食の宿を営む船越康弘は小川先生に教えを受けた者の一人として、この黒煎り玄米を
広めたいと思っていました。1980年代、縁あって鳥取県大山の麓に住む焙煎工房MATSUOの
松尾さんにその製法を伝えることとなり黒煎り玄米はとうとう製品化することになったのです。
それからは料理教室や講演会を通して少しずつ、この飲み物の素晴らしさをお伝えして、
皆様に喜んでもらってきました。
10年かけて出来上がったドリップ式玄米珈琲
そして、時を経ること10年、2004年の年の暮れ、突然、松尾さんから電話がかかってきました。
「とうとうできたんです! とてもおいしい、ドリップ式で抽出する玄米珈琲が! ぜひ、試飲してみてください!」
松尾さんの喜びようは、こちらが圧倒されるほどのものでした。早速飲んでみると、本当に味わい深いすっきりとした苦味とコク。あまりのおいしさに、なぜこのような美味しいものが出来上がったのかと、松尾さんに尋ねました。
すると、なんと驚くべきことに、あれ以来、10年間ずっと本当においしい玄米珈琲ができないかと研究を続けてきたというのです! そして、やっと納得の出来るものができたので、試飲して欲しかったということだったのです。10年ですよ、10年。それはもう、びっくりしました。
味もさることながら、体と心の変化に驚きました。
黒煎り玄米が体を温めてくれることは広く知られていますが、それだけではなく、
心がすっきりとしてくるのです。さらに驚いたことに一口飲んだとき、何か懐かしいような、
何かを呼び覚ますような安らぎを感じたのです。
メモリザ誕生
その時、頭にふっと浮かんだ言葉が、「記憶」です。稲の向こうにある記憶が
私に語りかけてくれたような感覚。稲を育んだ大地、水、風、太陽、そして宇宙の森羅万象、
その自然とつながったような感覚を覚えました。
それが、玄米珈琲「稲の記憶 メモリザ」の誕生です。
それから松尾さんと試行錯誤を繰り返しました。
そんな時、微生物自然農法の米作りに情熱を燃やす米農家
牧野仙一さんと運命的な出会いがありました。
このお米を使って2005年、ドリップタイプ、ティーバッグタイプ、
顆粒タイプの三種類の製品化にやっとこぎつけました。
日本でのコーヒー豆の消費量は年間約40万トン以上、その十パーセントが玄米に変われば
日本のお米の消費拡大に貢献し、飲む人の健康にも繋がります。
そして更に大きく言えば、「日本発の玄米珈琲文化を世界に広めたい」
こんな夢を、私は本気で考えているんです。