2019.12.13
|メモリザの焙煎士。松尾さんのご紹介
鳥取の大山の麓で「玄米焙煎工房MATSUO」を営む松尾さん。まだまだ玄米コーヒーの知名度がなかった27年前、呉服の訪問販売をしていた松尾さんが、なぜ玄米を焙煎する仕事に就いたのか。正解のない味という基準にどのように挑んでいるのか。その経緯について伺いました。
玄米の焙煎をする前は、元々呉服の訪問販売をしていたんです。そして自分のすることが直接健康とか社会に役立つことがしたいと漠然と思っていました。
そのため人生プランをどうやって立てればいいか内省や内観といった研修に通ったり、自然療法など勉強していました折、わらの船越さんに出会い「黒煎り玄米茶」を作ってみないかとアドバイスがあり、呉服の訪問販売をやりながら小さく始めました。
今振り返ると若かったのか、なんとなく「これを一生の仕事にしていく」と
根拠のない情熱がありました。
当時の黒煎り玄米茶というのは「玄神」という名で、
船越さんの師匠の小川法慶先生という方が作られたということは
自然食の業界では知られてました。
ただ、全くの素人、門外漢がお茶を作ろうとしたもんですがら
振り返ってみるとよくわからないまましていた印象です。
一切作り方はわかりませんでしたが、玄米を炒ったものということはわかっていました。ですのでコーヒー屋さんの焙煎機はどうだろうかと、今のようにネットで探したりできませんので呉服の訪問販売の傍ら、半日かけて探し回ったり、とにかく動きました。
最初は小型の焙煎機を50万くらいで購入しましたが、どうやって炒っていいのかわからず、13時間かけてみましたがなにせ正解の味がわからない。
本物を知っている船越さんに何度も試飲していただき
ようやくまともに飲める状態になるまで半年くらいかかりました。
完成度の基準がないものですから、この辺でってことで区切りをつけ「玄神MUGEN」という名称で販売すると船越さんや当時お世話になっていた研究所とのご縁もあり、どんどん売れました。
黒煎り玄米茶を作り始めたのが、38歳の時でした。
呉服の訪問販売と焙煎屋と二足のワラジをはいて生計を立てていたのですが、ある日、焙煎をしていた工場が火事にあってしまいました。途方に暮れていましたが、焙煎玄米の販売はだいぶ軌道に乗っていたので、なんとか早い再開をしなければいけませんでした。当時すでに両親も他界しておりましたので実家の部屋を一部改造して焙煎施設として使えないかと考えました。
もちろん借金したこともありませんでしたし、どうやってお金を借りたら良いのかもわかりませんでしたので、手探りながら国の経営革新企業に認定され、なんとか専業焙煎屋として商売を始める準備が整いました。
最初に購入した焙煎機は火災で使えませんでしたので、新しい釜を新調し
倍以上の生産ができる体制は整いましたが、釜が変わるだけで焙煎に係る時間、温度すべてが変わりましたので、また振り出しに戻ってからのスタートでしたね。
知らないことをやるのは、本当に難しい。
始める前は、かんたんに考えていたんですが、全然出来ませんでした。
玄米の焙煎機を動かし、何時間でどんな味の変化があるか。
毎時間飲んでいましたのでお腹はタプタプです。
ある時はイメージしているところまで近くいくが、すぐに離れていく。
同じ天候の日に、今日うまくいっても、次の日になるとまた味が違う。
天候、湿気、炒る速さ、排気音、釜の温度。
最初はなかなか安定しないので、煎り具合によって
ブレンドしたりしていました。
安定するまで8年くらいはかかったと思います。
今でも炒り始めは5分に一回測り都度調整しています。
玄米を炒ってそのままコーヒーのように抽出しても
まったくドリップしないんですよね。
せっかく炒ったのだからコーヒーみたいに
ドリップできたらいいなぁと試行錯誤していました。
味も安定しない中、何度もドリップしてもドリッパーから落ちない。
3年くらい経った時、途中で詰まっていたのが
ようやく抽出され「落ちたー!!!!」と大喜びで船越さんに電話し、
メモリザの話が決まりました。
玄神を始めて、メモリザになるまで10年くらいかかったと思います。
ビスケットとせんべいみたいな違いです。
メモリザはせんべい、他で作られている玄米コーヒーがビスケット。
普通玄米コーヒーを作る時は、お米を蒸して、乾燥させたものを炒って作ります。メモリザはお米を蒸さず生のお米から炒っていますので、お米に含まれている水分の含有率が違います。
長時間炒りますので、色素が増えポリフェノールがチョコレートなみに増えます。食物繊維も焙煎すると水溶性の食物繊維が30倍以上増えますので、便通がよくなり利尿作用もありますので、デトックス効果もあります。
こういった機能性や栄養成分に関してはデータをとっておりますので、
機能性と美味しさの両立ができているのがメモリザの強みですかね。
玄米コーヒーを作り始めましたがコーヒーでもお茶でもない
新しい飲み物なので、知ってもらうことが大事。
大山も近いのでよく趣味で登山に行くのですが、有名な山ですと道がついていますが、何年もあまり登られていない山なんかだと道のような道じゃないような道に出くわすことがあるんです。
かすかなニオイのような感覚を頼りに登っていくのですが
道がない所に行くともう大変です。行き止まりになったり、引き返したり、
低山でも迷うと本当にこわいですよ。
そんな中でも少しのサインを見逃さずに行ったり来たりとウロウロしていると
尾根のところにきて、頂上についていたりする。
まず知ってもらうことも、そんな道を作ることに近いと思います。
一つ道が見えると先が見えるんです。
知ってもらうことでドリップだけではなく、牛乳と混ぜて飲んだり
ミルクフォーマーや茶筅で抹茶ラテ風にしたり。
元々何もないところから手探りで今の味に至りましたので
今が正解でもないですし、いろんな飲み方を試して楽しんでいただければと思っています。
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